ロケットの作り方 第4弾( ロケット燃料を詰め込んだ モータとは)
”モーター”という言葉を聞くと、ダイソン掃除機の”モーター”や東京”モーター”ショーのモーターとか浮かぶかもしれません。
(JAXAさんより引用)
ロケットで”モーター”というと固体ロケットを動かす動力源になります。
2つの液体を合わせて燃やす液体ロケットは一般的には”エンジン”という呼び方をします。
固体ロケットはその名前の通り、固体の火薬を燃やした熱が爆発的に気体:ガスとなり、そのガスの爆発的な圧力がロケットを地球からときはなつ推進力となります。
そんな、爆発的な力を発生させるところ”モーターケース”は熱にも圧力にも耐えうる強さを持ったものを作らなければなりません。
(具体的な作り方)
火薬を入れる”モータケース”は最近はだいたいが”繊維(せんい)やゴム”から作れています。
まず、火薬が入る部分の形取った型があります。
それに数ミリ程度の薄いゴムを何層か巻いていきます。
なぜゴムを巻くかは後程お話しします。
ゴムは巻いただけだと、それぞれが一体とならないので、大きな炉に入れ、熱と圧力をかけて固めます。
ゴムは固めただけだとデコボコしているので均一な厚さとなるように少し削ります。
”なぜ、デコボコのままではいけないか?”
ゴムの上にはこれから解説するように繊維を巻いていきます。デコボコだったら
その繊維が波うってしまいます。波うってしまうときれいにならべることで強さがでる
繊維がバラバラになり強さがでなくなってしまうからです。できあがったものはその強さを検査するために、中に水をいれて水圧をかけて検査します。その時に、水が漏れたら大変ですね。ロケットとしては使えないものになってしまいます。
次に巻くのは”樹脂を染み込ませた繊維(せんい)”です。
繊維と言ってもみなさんが抱くイメージの繊維と少し違うかと思います。
(東レさんより引用)
FRP:繊維強化プラスチックというのが正式な言い方なので、線状のプラスチックをイメージしてもらった方が近いかと思います。
そんな繊維を固めたゴムの上にぐるぐる巻きつけていきます。巻きつけ方も強さがしっかり出るように工夫します。斜めに巻くとかです。繊維なので、洋服とかと同じように縦横と編みこむようにしていかないとまんべんなく強くできないのです。
そして何層か巻きつけ、巻きつけが終わったらゴムと同じように
大きな炉に入れて、熱で繊維を固めます。この時は繊維に染み込ませた樹脂が
熱と圧力に反応して、カチカチに固まります。この樹脂と繊維の組み合わせでも
強さやもろさが変わってきます。
最後に他の部分との結合部は、さらなる強さが必要になる箇所なので、ここではアルミなどの軽い金属リングを使うことが多いです。
こちらは繊維と金属リングをボルトなどでつなぎます。
これで火薬を入れる筒”モーターケース”は完成します。
他の商品もそうだと思いますが、そこから、このものの強さは規格を満足しているかの
試験や内部に欠陥がないかのX線検査などをして、初めて使っても問題ないことを
認められます。
そのモータケースはその後、中に火薬を入れます。一般にはロケットの”推進薬”と
呼び方をします。
推進薬は爆発的に燃焼しやすいようにアルミ粉末や空気が空気がない状態でも燃焼するように酸化剤、そしてそれぞれを混ざるようにするゴム(バインダー:接合剤。※文房具のバインダーと同じ言葉です。)などを混ぜたペースト状のものを詰めていきます。ここでも燃焼時の高圧ガスがしっかりロケットの推進力になるように工夫された形状にペーストを流し込み時間をかけて固めます。
推進薬が固まったら、形状を削って整え、モーターケースが
”モーター”として完成します。
そして再び固まった推進薬が問題ないかを非破壊検査などを通して、確認します。
そこで合格となったらやっと、全てが終わり”モーター”として完成です。
前にでた”なぜゴムを巻きつけるか”ですが、推進薬とモーターケースの間にゴムをいれることによって、モーターケースを推進薬の燃焼の熱から守るためです。
また、ゴムはそれ自身が推進薬が燃焼によって、ゴムも高温で溶けていきますが、
その時ガスを発生します。(ゴムを燃やすと変なけむりがでてくるやつです)
そのガスの発生でさらに溶けることを防ぐ断熱効果もあります。
結構長い道のりを経て、ロケットを動かす推進力となるモーターは作られます。
燃えている時間がたった数分ですが、作る時間は何ヶ月もかかるのです。
(JAXAさんより引用)
モーターはロケット打ち上げで燃えて分離された後は海に落下し、海底で魚の住処となります。
これだけ手間がかかっているので、もちろんコストもかかります。
これからはもっとロケットを安く打ち上げるために、使い捨てでなく再使用かもっとスピーディーにモーター作って安くしなければならないのが宇宙ちゃんねるの宿題でもあります。
またこれからはもっと比推力:重さに対して推力の大きさを大きくしていく、つまり軽いけどロケットを押し上げる力は強い”を目指さないといけません。
ロケットが軽ければそれだけ重い人工衛星を打ち上げられるからです。
そのためには軽くても強い”新材料”の開発もどんどんしていかなくてはいけません。
そこは以前に記事にも出た”化学(ばけがく)”の力で切り開いていくのです。